ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)の社会政策研究センターの今年1月の「未来の国に戻る」調査によると、ブラジルの社会格差は過去欧米諸国が金融緩和政策を導入して金融市場に資金がだぶついているために11年連続して縮小、1960年から調査を開始して以来では最も縮小している。
今年1月の時点で過去12カ月間のジニ係数は、2.1%減少の0.5190と社会格差が改善されており、FGV財団では、ブラジルの社会格差は今後も継続して縮小、2014年のジニ係数は、0.51407とさらに減少して改善されると予想している。
調査のコ-ディネーターであるマルセロ・ネリ氏は、「格差が縮小してきているにも関わらず、ブラジルの社会格差は最も大きい12ヶ国の中にランク入りしている。しかし2001年から昨年までの社会格差の縮小は驚くほどであり、社会格差の縮小は継続されなければならない」とコメントしている。
昨年1月から今年1月までの貧困率は、意義のある7.9%減少に達しているが、ブラジル経済が好調であった2010年から2011年では11.7%減少していた。また2000年から2009年の50%を占めた最貧困層の収入は68%増加、その一方で10%を占めた最富裕層の収入は10%の増加に留まっていた。
ネリ氏は、「ジウマ・ロウセフ大統領が貧困撲滅のために、大きな目標を掲げているにも関わらず、ジウマ政権が終了するまでには貧困は無くならない」と述べている。FGV財団の調査では、ヨーロッパの債務危機の影響はブラジル人の収入減少には結びつかず、今年1月の時点で過去12カ月間の家族当たりの収入は2.7%増加、しかし世界金融危機の影響を受けた2009年の収入は減少した。
FGV財団では、今後2年間のA/Bクラスの収入の伸び率がCクラスよりも増加すると予想、調査によると、社会格差のピラミッドの頂点にいる富裕層の収入は、2014年までに29%増加するが、Cクラスは11.9%の増加に留まる。
同氏は新A/Bクラスを新中間層と呼び、Cクラスの購買力は、上位クラスよりも大きいと説明している。同財団では、2014年までに国民の60.1%がCクラスを形成すると予想して、2011年の55%から大幅に増加する。2003年から2011年にかけて、4,000万人の国民が新たに中間層に入った。
今後2年間に更に1,200万人が中間層に入るために、1億1,800万人まで増える。ブラジル地理統計院(IBGE)の家庭収入調査(POF)を参考にしたFGV財団の統計表では、Cクラスの家庭収入が月間1,734レアルから7,475レアル、Bクラスは7,475レアルから9,745レアル、Aクラスは9,745レアル以上とクラス分けしている。
同氏は、2014年までに700万人がA/B クラス入りして2,910万人に達すると予想、しかし2003年は僅かに1,330万人であった。家庭収入が月間1,734レアルまでのD/Eクラスは、減少して社会格差の縮小に結びついている。
同財団では、現在のD/Eクラスは6,360万人に達しているが、2014年には4,890万人まで減少すると予想、2003年のピラミッドの底辺を形成していた当時D/Eクラス国民は9,620万人であった。
ネリ氏は、「この貧困層から中間層への移動は、ルーラ大統領が父親、カルドーゾ大統領がお祖父さん役として、教育に力を入れたために実現した。」と評価している。また彼は正規雇用の増加、貧困層の新生児の死亡率低下や社会格差の縮小は、ボルサ・ファミリアなどの社会プログラム導入が、基本的要因になっていると説明している。
ルーラ政権時代にブラジル経済が過熱して、中銀がインフレ抑制のために金融引締め政策の導入に迫られていた時に世界金融危機が発生したために、都合よくブラジル経済過熱にブレーキがかかった。
米世論調査機関ギャラップが世界158の国・地域を対象に行った住民の先行き幸福度の調査を参考に作成された、1ポイントから10ポイントまでに分けられるFGV財団の社会政策センターによる将来の幸福度調査では、2015年のブラジル人の幸福度8.6ポイントと世界で最も高かった。
米国は世界14位で8.0ポイントとヨーロッパ諸国よりも高かった。アイルランドは16位で、英国は26位、イタリアは56位、ドイツは62位、大きな債務を抱えるギリシャは145位並びにポルトガルは146位と両国民が先行きの不安感を抱えているのは、国の負債と国民のカルチャーが大きく影響していると、ネリ氏は指摘している。(2012年3月8日付けエスタード紙)