ペトロブラスをめぐるラヴァ・ジャット汚職事件の連邦警察による捜査が2014年3月に開始、ゼネコン最大手のOdebrecht社(オデブレヒト社)が長年にわたって常習的に取引先企業との契約で水増し請求をさせ,捻出した裏金を政党や有力政治家に繰り返し渡していた事件の発覚で、同社をはじめブラジル国内の大手ゼネコンの多くは企業閉鎖を余儀なくされた。
昨日17日にオデブレヒト社は、985億レアルに達する負債総額を抱えて、債務者の生産、従業員の雇用および債権者の利益を維持すること等により、債務者が経済財政危機を乗り越えることをサポートするための手続である裁判所の企業再生を申請した。
ブラジル最大級のコングロマリットであるオデブレヒトグループは、2013年に建設業をはじめ石油・天然ガス関連事業、石油化学、公共輸送サービス、造船、水力発電、エタノールなどの分野に19万3,000人の従業員を擁していたが、今では4万8000人まで減少している。
オデブレヒトグループの負債総額985億レアルのうち510億レアルは債権者との再交渉、330億レアルはグループ内での負債、145億レアルは譲渡担保で大半はブラスケン株となっている。
オデブレヒトグループは傘下の21企業の企業再生法を申請、砂糖・アルコール生産のAtvos社は今年5月に企業再生法を申請、石油・天然ガス開発のOcyan社は、債務者は事前に債権者と交渉し、債権者の承認を得た上で、裁判所に対して再生計画の認証(homologação)を求める裁判外の企業再生法(recuperação extrajudicial)を申請している。
また造船部門のEnseada社は、受注残が皆無で港湾ターミナル建設を予定、輸送関連の OTP社は資産の大半を売却、 建設・不動産関連のOR社は企業名変更でイメージアップを図っている。
オデブレヒト社はサント・アントニオ水力発電所を持株の一部を中国企業への売却を交渉中、石油化学関連のブラスケン社売却でLyondellbasell社と交渉していたが、先月交渉は決裂していた。
オデブレヒトグループの大手債権銀行として社会経済開発銀行(BNDES)や連邦貯蓄金庫(CAIXA)、イタウー銀行、サンタンデール銀行、勤続期間保障基金ファンド(FI-FGTS)が債権交渉に応じるが、連邦貯蓄金庫は、年末までに国庫庁に200億レアルの負債返済を迫られているために交渉が難航している。
ルーラ政権並びにジウマ政権下のインフラ整備部門を中心としたメガプロジェクトの請負で2015年のオデブレヒトの売上は1,320億レアルに達した一方で、2008年~2015年の負債総額は180億レアルから1,100億レアルに拡大していた。
オデブレヒト社は1944年に建築技師のノルベルト・オブレヒト氏がバイア州サルバドール市に設立、1952年にバイア州とゴイアス州境に初めての水力発電所を建設、1953年にペトロブラス石油公社向けにバイア州で石油パイプラインを建設。
1969年に南東部地域に進出してペトロブラス本社を建設、1979年にはペルーやチリに進出、1991年に息子のエミリオ・オデブレヒトが社長に就任、創立50周年の1994年には21カ国で事業を展開、従業員総数は3万4,000人、2001年にはCopene社を買収して南米最大の石油化学会社が誕生、2002年にブラスケン社を設立。
2009年に孫のマルセロ・オデブレヒトが社長に就任、2013年の売上は1,000億レアルを突破、従業員数は19万3,000人、2014年にラヴァ・ジャット汚職事件発覚、2015年にマルセロ社長逮捕、2019年に企業再生を申請を余儀なくされている。(2019年6月18日付けエスタード紙)