今月5日、世界1位の経済大国米国と3位の日本が主導してオーストラリア、カナダ、メキシコなど12ヵ国が参加する環太平洋経済パートナー協定(TPP)交渉合意で、全世界の国内総生産(GDP)の40%を占める巨大経済ブロックが誕生した。
昨年のブラジルのTPP12か国向け輸出総額は540億ドル、そのうち完成品輸出は310億ドルで完成品輸出全体の35%を占め、輸入総額は600億ドル、そのうち完成品輸入は470億ドルであった。
ブラジルの輸出競争力は低下してきていたが、TPP交渉合意でさらに低下するとブラジル貿易会(AEB)のジョゼ・アウグスト・デ・カストロ(Jose Augusto de Castro)会長は指摘、早急な経済ブロックやFTA交渉などを加速する必要性を訴えている。
また現在のレアル通貨に対するドル高の為替の影響で、今年の貿易収支は130億ドル~140億ドルが見込まれているにも関わらず、輸入減少比率が輸出減少比率を上回っているネガティブな貿易収支の黒字拡大であるとカストロ会長は指摘している。
TPPの最終合意で米国からTPP加盟国向け鶏肉輸出関税は40%減少、大豆は35%減少するために、ブラジルは米国との間で牛肉輸出を含めて価格競争力を失うと憂慮されている。
5日にTPP 12ヵ国は米ジョージア州アトランタで行われた閣僚会議では争点の新薬の特許保護期間などで妥結してTPPに最終合意、創立メンバーは米国と日本、オーストラリア、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、ブルネイなど合計12か国となっている。このTPPは、中国の経済的拡大を牽制しようとする日米間の「新経済同盟」との見方もあるが、米国にとって21世紀のアジア経済圏における中国の影響力の抑制につながると重要な経済ブロック構築となっている。
環太平洋パートナーシップ(TPP)などの新たな経済連携潮流のインパクトの大きさは、単に参加国の地理的・経済的規模だけでなく、物品関税の削減やサービス貿易の自由化に加え、投資ルール並びに政府調達、知的財産、規制・基準の調和など広義の「非関税障壁」でもハイレベルの合意を目指しており、貿易ルールに留まらず国内の規制にも影響を与えると予想されている。
今回の環太平洋経済パートナー協定(TPP)交渉合意で、南米南部共同市場(メルコスール)加盟国のブラジルはヨーロッパ連合国との自由貿易協定締結の再開に向けての舵取りを迫られており、また中国との二国間貿易協定締結など早急な自由貿易協定締結を迫られている。
現在のブラジルから中国向け輸出品目は鉄鉱石や農畜産物などのコモディティ商品が牽引しているが、今後は収益率が高い付加価値品目の輸出に切り替える必要がある。
ブラジルはメキシコと二国間の経済補完協定のもと自動車製品に関する特恵貿易協定など南米における優位な貿易関税などでTPP交渉合意後も米国との貿易ではそれほどダメージを受けないと予想している。(2015年10月6日付けエスタード紙)