格付け会社S&Pによるブラジルの長期外貨建てソブリン格付けをジャンク級「BBプラス」への引下げによる信用下落を防ぐために、連邦政府は財政再建の取組として財政プライマリー収支の改善を迫られている。
先月末にネルソン・バルボーザ企画予算相が提出した2016年度連邦予算案では歳入減の影響で国内総生産(GDP)の0.5%にあたる305億レアルの基礎的財政収支(プライマリーバランス)赤字発表した影響も含めてソブリン格付けは下げされたが、新たに連邦政府は2016年の財政プライマリー収支黒字GDP比0.7%に相当する438億3,400万レアルを達成するために、大幅な財政支出カットを迫られている。
ジウマ大統領は経済成長牽引の旗手的政策として、大統領選を征してきた低所得者層対象の大衆住宅建設プログラム“私の家、私の暮らし”MCMV向けフェーズ3向け予算のカット、貧困家庭向けの生活扶助制度「ボルサ・ファミリア」の予算カット、2007年にプロジェクトが開始されたサン・フランシスコ河の大灌漑工事の予算カットが余儀なくされている。
連邦政府が最大限に予算カットできるのは2016年の財政プライマリー収支黒字GDP比0.7%に相当する438億3,400万レアルのうちの18%に相当する115億レアルとなっている。
2016年の財政プライマリー収支黒字目標438億3,400万レアルのうち中銀並びに国庫庁、社会保障院(INSS) で構成される中央政府の黒字目標は344億レアル、地方政府(州・市)は94億レアルとなっている。
今年のMCMV向け予算は352億5,000万レアル、2016年は424億レアル、またサン・フランシスコ河の大灌漑工事予算はフォルタレーザ市への上下水道工事インフラ予算12億レアルが上積みされている。
連邦政府は社会開発・飢餓対策省向け予算を13億5,000レアル追加して貧困家庭向けの生活扶助制度「ボルサ・ファミリア」向けのインフレによる目減り分を補う。
また2016年のリオ市のオリンピック向けの治安対策向け追加予算として3億レアルを追加、レアル通貨に対するドル高の為替による補填目的で外務省に4億レアルの予算を追加すると予想されており、逼迫している財政再建政策には程遠い予算削減になる可能性が強い。(2015年9月14日付けヴァロール紙)