昨日、米国格付会社ムーディーズは、ブラジルの自国通貨建てと外国通貨建ての長期債務格付けを「Baa2」から「Baa3」に引き下げたにも関わらず、辛うじて投資適格級としては最低水準を維持した。
ムーディーズは投資適格級としては最低水準の「Baa3」を維持したにも関わらず、今年と来年はブラジルの経済環境は停滞気味で、国内政治情勢も比較的不安定な状態が続くとみている。
しかしムーディーズは、ブラジルの投資適格級の格付けが脅威にさらされるほどブラジルの公的債務をめぐる状況が著しく悪化しないと見込んで、格付け見通しを「安定的」に位置付けている。
投資適格級としては最低水準の「Baa3」で格付け見通しを「安定的」としたために、今後1年間にわたってブラジルの長期債務格付けは、最低水準の「Baa3」を維持すると連邦政府関係者は安堵している。
年初からジウマ第2次政権の新経済班責任者は、米国格付け会社による長期債務格付けの格下げを防ぐために、大幅な歳出削減による財政プライマリー収支の黒字目標達成を掲げていたにも関わらず、歳入減少による見直しを余儀なくされていた。
連邦政府は今年の財政プライマリー収支黒字目標のGDP比1.13%に相当する663億レアル達成は不可能と判断してGDP比0.15%に相当する87億4,000万レアルに引き下げると発表していた。
中国経済の先行き不透明感増加並びに鉄鉱石や石油の国際コモディティ価格下落によるブラジル大手企業の収益の悪化、また財政支出拡大および政府債務増加が想定されることなどを指摘したスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げていた経緯があった。
中銀のグスターヴォ・ロヨラ(Gustavo Loyola)元総裁は、「ムーディーズによるブラジルの長期債務格付け「Baa3」への引下げは、連邦政府による今年の財政プライマリー収支黒字の目標引下げ発表で明らかであったが、格付け見通しを「安定的」としたために今後6か月間の格下げは発生しない」と説明している。
カトリック大学(PUC-RJ)教授でOpus Gestao de Recursos社チーフエコノミストのジョゼ・マルシオ・カマルゴ氏は、「今年のGDP伸び率はマイナス2.5%~3.0%、2016年はマイナス0.5%~1.0%、2016年の財政プライマリー収支黒字はGDP比0.7%に留まって公的債務残高がGDP比70%に達すると予想して格下げされる可能性が強い 」とコメントしている。(2015年8月12日付けエスタード紙)