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(特別記事)イエス、アイ・キャン……だがインフレはさらに深刻化する 2013/04/29

インフレの昂進が再燃しかねないことに不安と懸念を抱くブラジル人にとって、トマトが悪のシンボルになった。だが政府は、これまでのところ、トマトに足を奪われ踊らされている状態だ。つまり、問題に対してその場しのぎで対処しているにすぎない。

パラナ州がアルゼンチンとパラグアイと国境を接するフォス・ド・イグアスのブラジル側の税務署員は、ここ数日、残業に次ぐ残業を余儀なくされていた。彼らは、密輸トマト対策に躍起になっていたのだ。密輸が盛んになった理由は、ブラジル国内のトマト相場が、周辺諸国の相場の2倍に跳ね上がったからだ。トマトは2013年1月から3月にかけて、平均で60%値上がりしスーパーマーケットの値上がり品でトップの座を確保した。前年同期と比較すると値上がりは120%に達し、1kgあたり10レアルを突破した。その価格は、国民的なジョークにもなったほどだ。トマトを高貴な宝石や芸術作品と比較する風刺画が、インターネットにあふれかえった。もっとも、そのテーマがインフレの再燃とあって、このジョークは笑いを伴うものでなかったのが皮肉ではある。

ブラジル地理統計院(IBGE)が先週発表した拡大消費者物価指数(IPCA)のデータによると、インフレは3月までの過去12か月間に累積6.59%に達し、政府自身が設定したインフレターゲットの上限を突破した。公式のインフレターゲットの中間値は4.5%、許容誤差を含めると上限は6.5%である。長らく休眠状態にあったインフレという言葉が、ブラジル人が日常会話で交わす単語の1つに復帰した。爆発的なインフレの原因は、その大部分が食料品の値上がりに負っていた。一部の生産地で長雨、さらに別の生産地では干ばつに見舞われたことが、ブラジルの食卓に日常的にのぼるトマトの供給を縮小することになった。例えば北東部の干ばつの影響でマンジオッカ芋(キャッサバ)も不作となり、マンジオッカ芋粉は昨年、151%も値上がりした。もし、この理由を悪天候だけが原因だと主張できれば、実に単純なことだろう。しかし実際には、インフレ対策が注目されるようになって以降、かなりの期間、政府はこの問題に振り回されている状態だ。政府にとっては、2年足らずの間に、インフレ率が公定インフレターゲットの上限を突破したのは、これで2度目となる。ジウマ・ロウセフ大統領が就任して以来、IPCAがインフレターゲットの中間値である4.5%を下回ったことは一度もないのだ。したがって、インフレ昂進の要因を、状況に類する要素あるいは一時的な要素に求めることはできない。ジウマ大統領はある時、停電を落雷のせいにするなどお笑い草だと発言した。同じように、インフレ昂進の原因を気象現象のせいにするのは、冗談と一笑に付すべき所作のはずだ。しかもエコノミストの多くが、現実の価格は公式インフレ率を上回って推移していると指摘する。

だが、このようなことは大きな懸念材料と呼べるものではない。驚くべきことは、政府が、日ごとに、インフレに至った原因を考慮しなくなっていることだ。実のところ、インフレは値上がりではない。インフレとは、通貨が購買力を喪失することだ。ではなぜ、通貨が購買力を失うのか? その理由は、売りに出されている商品以上に通貨が潤沢だからだ。もし、商品を購入可能なだけの通貨以上に商品が潤沢に存在するなら、これとは逆の現象が発生する。人々はより少ない金でさらに多くの商品を購入するだろう。そのようなことは、イタマル政権において財務大臣としてインフレという名のドラゴンと戦った歴戦の英雄、フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾなら知っていることだ。物価の上昇は、まさに暴騰と呼べる状態になる。インフレというのは、実に一途な性向を持った害虫だ。この害虫は、物価スライド制の枠組みの中で、静かに、かつ急速に蔓延する。そして、アルコール中毒患者がすする最初のひと口のように、堰を切ったように地獄のドアを開け放つ。インフレは、減税と戦い、生産者と中間業者、消費者の間で交わされる交渉で暴れまわる。だがインフレには、もはや対話は存在しない。インフレが耳を傾けるのは、利上げと公共支出の削減、金融引き締めなどの大衆の支持を得られない政策に限られる。低金利という選挙向けの御旗を掲げたことで、政府は、現実に目を向けることを拒否しており、しかも政府が依拠するメカニズムは少なくとも民主的な制度の下では、いかなる時代、場所においても効果を発揮したことがないのに、あくまでこれで物価を抑制することに固執している。

信用収縮のバランスを取るという伝統的かつ効果的な方法でインフレを退治する代わりに、政府は、次第にその場しのぎの対応への傾倒を強めている。全ては低金利を維持すること、そして恐らくは、それによって成長を刺激するという題目を継続するためなのだ。コンサルタント会社MBアソシアードスのチーフエコノミスト、セルジオ・バーレ氏は、「若干のインフレは、ある意味、GDPにとっても良い影響を与える。これこそ今、ブラジリアで盲信されている理論だ」と話す。「クリスチーナ・キルチネルは極端にその信念を貫いている。現在のアルゼンチンが見舞われている年率およそ30%というインフレを退治するのは、苦痛を伴うだろう。魔法は存在しない。深刻な不況は不可避であり、将来、誰かがそれを手掛ける必要がある。だが、それに手を染めるのは絶対に彼女ではない」。小手先のインフレ退治には限界がある。その場しのぎの政策が完全に意味をなさないことは、ブラジルのケースでも同様だ。経済に対する政府の恒常的な介入は投資家を驚かせ、生産能力の増強のために投入される資金も落ち込む。こうした状況は、インフレを伴わず持続的な経済成長を達成するという、健全な経済においてあるべき姿とは全く逆だ。そこでブラジルでは、経済活動はやや停滞した状態が続く。今後は、これまで活況を呈してきた消費までが、落ち込む兆候を示すだろう。それはなぜか? 物価の上昇は、既に負債を抱えている大衆の購買力を失わせ、出費の見直しを促すからだ。

最終的に、経済を再び指標化する圧力が生じてくる。応用経済研究院(Ipea)のエコノミスト、マンスエット・アルメイダ氏は、「長期にわたってインフレが高い水準にある場合、人々は、政府がインフレを認めていると考え始める」と指摘する。「失業が低水準にあることで、労働組合は、彼らが代表する業界の労使交渉で、より高いインフレ率を見込んだ大盤振る舞いの賃金調整を要求することができる」。ところがこの勝利は錯覚なのだ。インフレが昂進し、かつ指標化された経済では、賃金が物価の調整幅を上回って上昇することなどあり得ない。生産原価も同様に上昇する」。そしてマンスエット・アルメイダは、次のようにも話す。「インフレは、単にトマトあるいはレタス、牛肉を買おうとする消費者を悩ませるだけではない。工業部門の競争力に打撃を与えるのだ」。

ブラジルでは過去にも、インフレの原因が、トマトのせいになったりハヤトウリ(シュシュ)相場のせいになったり、心理的要因や小売仲買人の値上げなどのせいにされてきた。凶作なら確かに、相場が一時的に値上がりする原因にもなり得る。だが、物価が断続的に上昇していることから、より深刻なバランスの崩れが存在するはずだ。インフレは、経済が吸収できる規模を上回って通貨が流通している場合のみ、勢いを得て広がる。別の言い方で定義するなら、それは、商品とサービスの供給を上回って消費が拡大する場合ということだ。経済は厳密な科学ではないが、幾つかの、定説として確立された法則がある。その1つは、消費に対してインセンティブが与えられ、しかも、需要が供給を上回った場合には、物価が上昇するということだ。議論の余地がないもう1つの経済法則は、インフレを抜本的に退治するには、唯一の方法としてマネーサプライのコントロールが不可欠だというもの。それは先週死去した英国のマーガレット・サッチャー元首相が、1979年に首相に就任後に実地に証明したことでもある。だが大統領の支持率を優先するブラジル政府内では、別の現実の中に生きている。公共支出の拡大と優遇政策の拡張、助成の拡大、市場の開放に対する障壁の導入、より多くの公社の設立といった、大衆受けする政策の導入に対する圧力を、政府は強めている。ブラジルは、経済構造のバランスの崩れに対して現在のような分析手法と管理手法が存在しなかった60年代と比較して、知的にも手法的にも廃頽している状況にある。GDP成長率がわずか1%にとどまる一方で雇用の規模が2%拡大するということは、何ら喜ばしいことなどではないと理解すべきだ。なぜなら、この状況は、労働者が生み出す富がより小さくなっていること、したがって、生産性の下落を意味するからだ。生産性の向上が経済成長を上回るほど、インフレに対する圧力が緩和され、より大きく成長する道が開ける。商業が工業の成長を上回って拡大しているのであれば、それは、ある国で、労働者にとっては生産性が向上する以上に賃金が上昇していることを示唆する。健康なバランスを維持するのに理想とされるのは、生産性と給与が同じ比重で上昇することなのだ。そして、上記の例に挙げた「ある国」こそ、ブラジルなのだ。今ここで発生しているインフレは、その原因を特定せず対処もしなかったという惨劇の帰結だ。

政府が先週発表したインフレ指数は、政府自身が設定したインフレ指数を突破しており、ブラジリア界隈も危機感を募らせたように見える。経済政策に対する信頼性が余りにも蝕まれているというのが、一般的評価だ。連立与党も、インフレを懸念し始めた。下院のエンリッケ・エドゥアルド・アルヴェス(PMDB:ブラジル民主運動党=リオ・グランデ・ド・ノルテ州選出)議長は、政府がこの問題を排除するため、一層精力的な措置を導入する方針を支持している。ただしアルヴェス下院議長の物価上昇に対する意見は、投資を先送りし予防的な価格の改定を図っている財界の見通しにとって現状が歓迎すべからざるものだと主張しているにすぎない。「これまで発表されてきた対策はその場しのぎで不十分だった」とは、アルヴェス上院議長の発言だ。クルザード計画の失敗とインフレの悪化により国民の支持を失うという惨劇を経験したジョゼー・サルネイ元連邦大統領は、政府が金融引き締め政策の手綱を緩めるべきではないと主張する。「インフレは経済秩序を完全に破壊し、より貧しい人々に打撃を与える。最悪の事態だ」と、サルネイ氏は言う。「我が政権下では、価値修正を伴うインフレという、さらに悲劇的な状況だった。月初には誰もが金満家だ。だが、月末には誰もが貧しくなるのだ」。一方で、デルシジオ・アマラル上院議員(PT:労働者党)は、大統領が採用してきた対応を弁護し続けている。曰く、「政府は、全力を挙げて努力している。中央銀行による利上げなど、依然として政府が採用可能な対策は残されている」。

国会は、公共支出を拡大する選挙法案を否決し、より現実的な予算支出を承認して、インフレ撲滅への努力を後押ししている。これは、過去数年の動きとは正反対。もっとも、国会の支援は、もしそれを意図するものとして存在した場合には、生活必需品セットに対する免税措置と電気料金の引き下げのような、貧困層対策を目的として大統領が提出する案件の採択に限られる。この取り組みは政府のプロパガンダの旗印になったが、価格調整の広がりを食い止めるには不十分だった。好材料は、農業生産現場の天候が改善しており、トマトとその他の食品の価格が下落してることだ。悪材料は、歴史的かつ構造的なブラジルの高インフレの原因へのテコ入れが、一切手つかずな点である。適切なインフラが欠如していることで港湾の中にはトラックが行列をなし、国内で消費される製品ですら運送料が上昇している。こうした状況で効果的な減税を施すことは、企業の競争力を高めて製品コストを引き下げる効果を発揮するだろう。例えばマーガレット・サッチャーの採用したモデルは、全ての企業に平しくチャンスを与えるものだった。だがPTでは、政府が受益者を選ぶのだ。大統領選を視野に、政府は、有利な状況を形成しようとしている。好況に人心が沸騰した日が過去のものとなり、今後の数四半期にわたって経済成長ペースが低迷するとしても、雇用水準を歴史的な高水準に維持するには十分だ。遅かれ早かれ、とは言え、遅くと形容するには遠からぬ時期に、インフレは、効果的な対策により退治されるだろう。その時、ブラジルの鉄の女は、政治家としての真価を証明することになる。(2013年4月17日付けベージャ誌)

 

ジウマ

 

サッチャー

公社4社を設立

経済体制

公社50社を民営化

些末な対応でインフレに対処しようとしている

インフレ対策

政府支出を削減し利上げを実施

ベネズエラの大統領選において独裁政権におべっかを使いアルゼンチンに対しては二国間貿易で出しゃばらないよう自重

外交

断固とした姿勢に転換し、アルゼンチ軍が侵攻したフォークランドを奪還、これはアルゼンチンの独裁制の弱体化と打倒につながった

政権内部に2000人の組合員を擁するも組合との交渉で優位に立てず

労組

それまで政権の交代や経済の悪化に加担した労働組合員を一掃した

国民は国家を支持すべきで、必要とあれば各自の利害も犠牲にすべきだ

個人の在り方

国家は国民に尽くすべきでその逆ではない

政府支出を十分にカバーできる税収を確保すべし

政府財政

政府は歳入を下回る支出をすべし。異論は認めない

外資は鼻持ちならない奴らであり、企業の利益は敵で常にゲームのルールを変更する。そして、生産と投資のための長期的な資金が重要な時に消費向けの投資の呼び込みだけを図る。

投資

安全に投資するための場所としてロンドンをヨーロッパと英国の金融街にした

 



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