元中央銀行総裁によれば、経済加速のためには焦点を消費から生産へ移すことが必要。
エコノミストで元中央銀行総裁のアルミニオ・フラガ氏は、ブラジルが5~6%成長するのに超越不可能な壁などないと考える。しかしそのためには、経済政策の焦点は、需要の刺激から離れ、ブラジルの生産性の貧弱なパフォーマンスを方向転換できるような措置(インフラと教育への投資、税金とエネルギーのコスト削減など)をもって供給の完全化へと向かわなければならない。以下はガヴェア・インヴェスチメントス(Gávea Investimentos)資金管理部門担当共同創立者であるフラガ氏のとのインタビューである。
●ブラジル経済の再成長が困難だが、それをどう見るか?
外部要因、周期的要因、より構造的性質を持った要因がある。外部要因は現在起きているもので、恐れおののいているといったムード、欧州を中心とした危機だが中国をも含んだ危機というムードで、それは中国が今年の初頭、成長が計画を下回っているためである。統計的な因子もある。昨年成長が緩やかあるいは低調だったという事実が、それを今年まで引きずっているのである。
●2011年のようにブラジルは少ししか成長しないのだろうか?
第2四半期の成長が第1四半期に対して1%あったとしても、年間の成長は低調となるだろう。私の見込みでは、欧州の雨と雷に左右されるので、第2四半期の経済は過去に行われた刺激に対する反応を示すものとなり、金利はさらに低く、政府は下がった為替以外に、クレジット(与信)分野への圧力も強めるだろう。
●成長を阻む周期的構成要素は何か?
クレジットの成長は自然に冷めるものだ。持続不可能な率で成長してきたため、減速したのである。何も劇的なことはなく、減速した。一定のポイント以上に需要を無理やり生み出そうとしても無駄だ。そして政府はそこを注視していくだろう。昨年に対して今年はインフレ率が下がっているが、2013年に何が起こるかということについては問題がある。だが、その段階ではシステムが機能するようになるだろうと私は思う。それについては心配していない。私は供給の面について心配している。この構造的側面には様々な障壁がある。
●それは何か?
インフラ、低調な投資、さらには、生産性が好ましい方向に改善していない可能性を示す数々の予兆だ。これらはブラジルにとってチャレンジである。長年、ブラジルにとってGNPの20%以上投資するのは困難なことだった。10年前も15年前も、それほど投資していなかったが、インフラはごまかしごまかしやってきた。4%近くの成長を数年続けた後の現在、インフラは単純に言って、もう耐えられない状態になっている。
●なぜ生産性と投資に問題を抱えているのか?
よりミクロ経済的性質を持ったテーマだ。ブラジルにおける保護主義の増強に賛同する立場は理解できるが、それにはコストがかかるし、それはあまり可視的なものではない。適格な人材が不足しているという問題がある。政府に結び付いた様々な問題がある。それは政府も注意しているが、ブラジル操業コスト、税制構造、エネルギーコストだ。
●経済加速に向けた政府の働きをどう見るか?
成長について言えば、政府は供給よりも需要のほうに焦点を当てているように見える。もちろん需要なくして経済は成長しないが、問題はそこではない。世界経済がブラジルの助けとならない現時点において、内需がそうそう伸びることはなく、供給の問題が強力に現れて来る。いや、この供給の問題は政府が議論し始めているテーマだと思うし、投資を増やすことの緊急性、生産性に関する問題へ注意を払うことの緊急性への意識が大きくなっているという感はある。私はブラジルの可能性にネガティブなビジョンは持っていない。すべて抜け道を作るのは可能だし、時間とともに修正することが可能だ。ただ、今現在世界全体が非常に悪いので、それが障害となっているのだ。
●ブラジルの潜在的成長率は?
COPOM(通貨政策委員会)の文脈上でこの表現を使うと、インフレに圧力をかけずに経済が進むのはどの程度の速さかということになる。つまり非常に短期の定義なのである。正確に測ることのできない数字で、様々な状況と要因に依存する。現在想像されている、あるいは想像されていたのは、4%前後というもので、それよし少し低いと言う人もいる。専門家ではない友人たちとの間で我々が議論する潜在的成長率ということなら、もっとずっと高い。
●どういうことか?
私が思うに、ブラジルがもっと投資し、教育に投資し、コメントしたことのうちのいくつかをきちんとやれば、もう少し持続力のある形で、かなりの期間にわたり、ひょっとしたら5%、6%成長できるかもしれない。そのために超越不可能な障壁は、私には見えないが、ブラジルが投資しないことには、いやそれよりも、もっと教育をよくしないことには、それは起こらない。
●ユーロ危機をどう見るか?
ギリシアは、問題を抱えている他の国々と比べても、絶対的に異質な国である。極端なケースだ。ユーロから離脱するかどうか言うのは難しいが、債務を払い切ることはまずあり得ない。ギリシアは、債務減額措置を受けた後も、自助に困難を呈している。万が一のギリシアのユーロ離脱の可能性は捨てきれない。
●2007年のリーマン・ショックほどの大危機になる可能性は?
可能性はなきにしもあらず、だ。それを回避するためには上手く組織化したものでなければならないし、それでもまだ確信するのは難しい。他の国々の人々はギリシアで起こっている事を見て、パニックに陥るかもしれないし、自分の国でも起きると思うかもしれない。そうなると、パニックはもっと広範囲に及ぶ可能性がある。非常に難しい時だが、避けて通るわけにはいかない。
(2012年5月26日、エスタード紙、フェルナンド・ダンタス、リオデジャネイロ)