アミール・カイル氏論評
政府が高い銀行金利の対策に着手し、重要なステップを踏み出した。あらゆるものを正そうとする十字軍的行為だが、と言って、即座に決定的な結果が出ることは期待されていない。その狙いは正しく、そして前回のコラムで指摘したように、大統領が自らこのプロセスを指揮していくことになった。4月30日には国営のラジオとテレビのネットワークを通じて、この金利を文明的な水準に引き下げるという公約を改めて示すとともに、依然として持続不可能な水準に金利を維持している民間銀行を非難した。高利貸しの銀行への対策は更に拡大し、そして社会的に支持されている。メーデーには、各中央労組がこの問題を大きく取り上げた。
政府と大多数のアナリストにとっては、新しい対策は民間の銀行に公銀と同等の金利で営業するよう強要するために採用されたことが明らかだろう。前回のコラムで私は、ブラジル経済基本金利(Selic)の利下げ継続を主眼に置いていると言及した。この利下げは銀行にとって財務省債券による利益を減らすことになって、結果として、銀行の営業がローンの提供拡大に向かう。同じことが、破壊的な銀行手数料の値下げにも効果を発揮する。一連の対策でこの外にも連携することになるのが、中央銀行への法定準備預金のパーセンテージを銀行が設定する金利に対応させるという措置だ。
年利8%を下回る水準にSelicを利下げは、ポウパンサ預金の利子の問題に突き当たる。そしてこの問題を解決するため、政府は4日からポウパンサ預金の規定を変更、もし利率が8.5%を下回った場合には利子をSelicの利率と連動させる。これは、利下げを可能にするというSelicの下落に道を開く。
このプロセスが完了した時点で期待されるのは、顧客の拡大が成長の原動力になるという、金融システムの質的な変化だ。社会は、この国の健全な発展に沿って使用するためにより多くの資金を期待できるようになる。
社会から支持され、銀行の顧客それぞれが重要な同盟主になるこの戦いを見守ろう。
津波。
資本主義システムの核心部分における危機とは、先進各国の中央銀行が崩壊した金融システムを救済しようと実施された、資金の流動性の爆発的な拡大との戦いである。注入された資金は、10兆ドル!規模になる見込みだ。資本主義システムのリンクがより緩やかなユーロ圏では、過去数年の通貨の発行でマネタリーベースは2000年の2兆ユーロから5兆ユーロに拡大した。アメリカ合衆国は、マネタリーベースを経済危機前の1兆ドルから少なくとも3兆ドルに拡大させた。通貨が氾濫した結果、これらの国々の貨幣は、通貨を戦略的に利用しない国の通貨と比較して値下がりした。これは企業間の国際競争をゆがめ、マネタリーベースに変更を加えなかった国々に拠点を置く企業に打撃を与えている。このひずみの是正は喫緊の問題であり、そのショックに対処できるのは同じ武器、言い換えれば、マネタリーベースの拡大だけしかない。
政府は、ブラジル工業の足元をすくって打ちのめしかねないこの通貨の雪崩から身を守ろうと、不適切な戦略を採用しようとしている。この国に流れ込む過剰なドルを、中央銀行によるドル買いを通じて吸い上げようとしている。それは雪崩の氷を布でふき取ろうとするようなオペレーションで、ブラジルが払うコストは極めて大きい。というのも、購入されたドルに対応してレアルを発行し、後に流通するこのレアルを年利9%という国債の発行によって回収するためだ。氷を拭き取ろうとする以外に政府は、特定の業種に対する迅速な減税とローン・オペレーションの敷居を下げることで工業の促進を図っている。こうした対策によってポジティブな影響がもたらされるが、その効果は限定的だ。重要なことは、この国に拠点を置くすべての企業に対して競争力を付与するということであって、それは、負担の大きな為替への介入ではなく通貨の発行を通じて行われるべきだ。
その意味で私はコラムにおいて、金利を負担する国債を政府が発行し続ける代わりに、我が国と同水準のインフレーションを記録する新興諸国の経済とバランスのとれた水準に達するまで通貨を発行すべきであると、政府に提案してきた。それは、経済における通貨の流動性を十分に高めるということだ。以下に示すように、幸運にもその余地がある。
M1。
通貨の流動性を示す重要な指標の1つがM1で、流通する現金に銀行の普通預金口座の預金を加えたマネーサプライのこと。ブラジルのM1は2000年以来、GDPの5%から6%の間で推移してきたことに注意してほしい。これは、その他の国々と比較すると極めて低い。
2010年のブラジルと10%以上に達している新興国を比較した最新データでは、アルゼンチンとメキシコが12%、インドが19%、南アフリカが31%、中国は60%だ。ユーロ圏の場合、2010年にM1は50%、日本に至っては104%だ。
15%を記録していた1970年以降のブラジルのM1は、1973年から低下し続け1993年には2%まで下落、その後は再び上昇に転じて2000年に5%に達すると安定した。理論上、M1はインフレーションと反比例する形で変動する。しかしながら実際には、常にそうなるわけではない。M1が15%の近辺で最も高かった70年代の前半、インフレは、現在の水準の4倍にも達するおよそ20%台で推移した。
もしM1が12%に達するまで徐々に通貨の発行を拡大するなら、年間230億レアルの利払いを節約することになるだろう。公共部門の負債は2,500億レアルへとGDPの30%以下に縮小し、為替相場は1ドル=2レアル以上の水準になって企業の競争力の強化に貢献、そして対外収支もバランスを保つ方向に向かっていく。
インフレーションのリスク。このような通貨の流動性の拡大が行われなかったのは、インフレーションの発生を政府が懸念したためだ。実際問題、為替で自国通貨が値下がりすると最初の段階では輸入品は高騰するが、輸出業者は相手先の市場で取り引きされている水準を考慮して価格を確立しようとする。そしてレアル安でも、国際市場の供給過剰に伴って価格が暴落しているために、輸入品の価格も同様に値下がりすることになる。こうして、次の段階で価格は適正化され、インフレーションは発生しない。
M1の拡大は、対内及び対外収支が均衡するのに貢献し、企業が持っていた競争力を取り戻すために必要不可欠だ。通貨の流動性を高める時が来た。
(2012年5月6日付エスタード紙)