長期的な構造的プログラム、はっきりした方向性、到達すべき首尾一貫した目標がない時、打開策は、即時的あるいは一時的な間に合わせの手で行動することだ。一過性で短期的ではあるが、成果を上げる手もあるにはある。それ以外の手はと言うと、使いまわされ最早疲弊し信用を失い、効果はゼロである。もっとも、税の免除やら補助金のクレジットやらで、一部の人間を潤わせ、大部分の者を蚊帳の外に置いて、空になってしまった国庫にとっては関係ないことであるが。
国庫が空になって、政府はこれ以上歳入を失うことを恐れ、悪循環に陥り、正しい事を行うことを諦めている。正しい事とはすなわち、税制改革に向かって前進し、自らの仕事の収入の36%を公庫に納める義務を負う1億9千万のブラジル人の税負担を軽減することだ。
これが、去る火曜日、第2次ブラジル拡大計画(Plano Brasil Maior)の第2段階の発表時に、ジウマ・ロウセフ大統領と閣僚たちが見せたパフォーマンスだ。舞台のショーは、輝きもなく、見飽きたものだった。観客席にいる企業家と労働者のリーダーたちは、感動もなく、不審を抱き、熱意もなかった。ブラジル工業連盟(CNI)会長ロブソン・デ・アンドラージ氏、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)会長パウロ・スカフ氏、「労組の力」会長パウロ・ペレイラ・ダ・シルバ氏は、諸対策について肯定的な判断を示したが、「解決ではない。その場しのぎだ」と述べた。
8か月前に施行されたジウマ政権の経済政策は、Fiespの調査によれば、ほとんど成果を生まず、工業界の72%は今日に至っても認知してない。第2バージョンは、実際のところ最初のバージョンにビタミンを添加したリフレインだが、新しいポイントが2つある。ひとつは良いが、もうひとつはそれほどでもない。良いほうは、INSSの免除が工業界の15の業界に拡大されることだ。もうひとつは、今回は450億レアルとなる、国庫からブラジル開発銀行(BNDES)への5回目の資金導入が、財政赤字を増大させ、納税者負担が増大されることだ。免税措置のほうは年72億レアルの経費増になり、新たな資金導入によってBNDESのほうは今年1,500億レアルの新規融資が可能となる。
ジウマ・ロウセフ大統領の意図は、製造業を難破から救い出し、民間セクターが投資を行うよう振興し、昨年平凡であった経済成長率を4.5%へと復活させようというものだ。しかしながら、彼女の経済チームは質を量と取り違えている。免税、補助金クレジット、輸入障壁といった措置の津波を築き上げ、軍事政権下でふんだんに使用されて20年前にぼろぼろになったモデルを繰り返し使っている。ある時、輸入品が国産品との競争に勝ち、財務省の人間たちは保護的措置に頼り、輸入税率をつり上げ、政府の購買に障壁を設け、堂々と、まさに将軍たちの好みで、国産品枠を創出し、わが国の工業技術の質に甚大なる遅れと損失をもたらしたのだ。
知恵と常識があれば、共和国大統領は77%の支持率(議会基盤との争いでは有利)という政治資本を使って、確固たる経済成長の基礎を根付かせ、構造改革に進み、インフラというボトルネックを取り除くことすらできる。ただし、民間資本投資の助けを借り、政府機関は、技術を前面に押し出し、独立した行動ができ、安定的かつ効果的な規則を作れるものでなければならない。
改革で結果を出し、インフラ投資を倍増できれば、ジウマ氏はブラジルにおける製造コストを高価にしている障害の半分を遠ざけ、競合相手との争いにおけるブラジル製品の競争力をつけることができるのだ。WTO(世界貿易機構)の抗議の対象となるような補助金がなくても、輸出産業が伸びるのは間違いない。
残りの半分だが、二つの障壁を克服しなければならない。教育への投資によってブラジル人労働者の生産性と職務能力を急いで高めること。もうひとつの改革構想(さらに難しく労力を要する)すなわち金融部門の改革構想を練り上げること。その目的は、製造部門投資のため長期の民間クレジットを再建し、企業への投資を資本化する機能を証券市場に戻すことである。
貿易
与信枠の拡大と輸出企業の構想以外に、火曜日発表された諸対策では輸出のルールは変更されない。それでよかったのだ。この分野での困難の一部は為替、対ドルのレアル高から来ている。政府は手持ちの兵器を使って行動してきて、今のところ、1ドルが1,80レアルより少し高いところで満足しているようだ。しかし、試した挙句にぼろぼろになり、破滅的な結果を招いた、古くけばけばしい過去のアイデアを、長持ちから取り出してくる者がいる。
ルーラ前大統領が最も話を聞いた顧問連の一人で、後継者も同様にしていると言われているが、それがエコノミストのルイス・ゴンザガ・ベルッソだ。彼はエスタード紙のインタビュー(4月3日のB4面)で、突拍子もない一連の提案を行っている。為替問題から始め、彼の視点では政府の直接介入で2,10レアルまで一気に下がるべきで、変動相場制は廃止すべきとのこと。では、インフレはどうなるのか?それは、「もう誰もインフレ目標システムを信じていない」とのこと。つまり、インフレが加速しても彼には問題が見えていないので、彼の提案では、インフレ目標と為替の変動相場制は廃止しろというのだ。
この異国趣味に反対するために数字を二つだけ。インフレ目標を作ってから12年間で、インフレが目標を超えたのはわずか3年だけ(2001年~2003年)である。それ以来、インフレ率は6.5%を超えていない。2006年は3.14%で、目標の半分以下だ。つまり、今日インフレがブラジル国民の金を盗んでいないのであれば、それはインフレ目標システムに負うところなのだ。為替に関しては、輸出収益は1999年の変動相場制導入までツルツル滑っていたことを思い出せば十分だ。その後、収益は480億ドルから2011年の2560億ドルへと飛躍的に伸びた。そして、著しい貿易黒字をブラジルにもたらしている。
インタビューで、ベルッソはもう一つの時代遅れの異国趣味が懐かしいと語っている。輸出恩典制度(Befiex)とIPI(工業製品税)恩賞クレジットだ。デルフィン・ネット元大臣が輸出振興のために40年前に創設したが、WTOに非難されて廃止となったものだ。Befiexは輸出品に使用される投入物は免税とするもので、恩典クレジットは輸出企業に国家予算から寄付がもらえるというものだった。両方とも、国民の収入から輸出企業へ、残酷なまでの収益の移動が伴った。
(2012年4月8日付けエスタード紙スエリー・カルダス氏コラム)