スエリーカルダス*
石油業界に再び注目が集まる中、岩塩層下の石油開発制度には変更なく、このことが様々な議論を呼んでいる。
9月27日に実施された石油開発鉱区事業入札の結果を見る限り、石油開発への無関心な状態が終わりを告げてブラジルの石油資源に対して大企業が再び関心を持ち始めたように思われる。このような状況にある今、次の2つの年月を経た重要な事項について考え直すことに意義があると思われる。すなわち、ペトロブラスによる石油市場の独占を定めた法律の終了から20年が経過したことと、岩塩層下という有望なエリアの石油探査で生産物分与契約(PS契約)を規定する法律が12月で施行から満7年を迎えることだ。
ペトロブラスが単独で石油探査を推進する能力を失っていたことは、カンポス堆積盆地の深海で巨大な埋蔵石油資源が発見された1970年代から明らかだった。すべてが、単一の企業にとって手に余る巨大さだった。それでも、連邦政府がそれを認めたのは、ようやく1997年、カルドーゾ政権のことだ。これ以降、無数の企業がブラジルに進出し、石油探査プロジェクトを加速度的に拡大することで新規投資と雇用、所得、そして富を生み出した。こうして石油・ガスの生産は、平均で、1997年の90万バレル/日から2017年には250万バレル/日に拡大、業界の雇用は3倍に成長した。
従来を上回る深海域で、岩塩層の下に石油資源が存在することは1980年代から既に知られていた。だが、2007年になってようやく採算性と分布域を測定することが可能になるとともに、原油を揚採する技術が確立されたのである。その後、紆余曲折の後、最終的にルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ元大統領が、岩塩層下の鉱区を対象に生産物分与契約(PS契約)を義務付けた法律を裁可した。これは、生産した原油の75%を連邦政府、25%を投資するコンソーシアムが権利を確保するというもので、ペトロブラスが最低でも30%の出資比率を保有して油井で唯一のオペレーターになることをも義務付ける。
この対応は、何もかもがボタンを掛け違えるものとなり、独占的な権利をペトロブラスに取り戻そうとする試みは、実際のところ同社がそれを欲しなかったとはいえ、これに失敗した。燃料価格を凍結したことで財務状況をひっ迫させ、政治家に食い物にされ、労働者党(PT)政権によって無分別かつ当然の権利のように酷使され、 返済不能な負債を背負わせられ、ペトロブラスは、岩塩層下への投資能力、それも単独の事業主としてそれを展開するだけの資金力を失った。これに伴い、2013年にリブラ油田を対象に唯一実施された石油開発鉱区事業入札では、ペトロブラスと仏トタル、英=蘭のシェル、中国企業2社が組織したコンソーシアムの単独入札という結果に終わった。まさに、それだけだ。石油開発鉱区事業入札は凍結され、ブラジル経済はリセッションに沈み込んだ。
信頼を失墜した我が国と大統領、ラヴァ=ジャット汚職捜査で判明したようにモラルを失ったペトロブラスの有様を見て、投資家はブラジルから我先に逃げ出した。岩塩層下の石油資源は引き続き深い海の底に埋没したまま放置され、ブラジル国民はこの富を享受できなかった。2016年11月に法律が改正され、ペトロブラスはしがらみから自由になり、石油開発鉱区事業入札が再開(2019年までに8回実施される予定)、世界最大の石油会社でありながらブラジル市場に見切りをつけていたエクソンを含め、投資家も復帰した。法律は改正されたが、岩塩層下を対象にしたPS契約制度は変更されておらず、景気が回復する今、それを大きく左右する論争を巻き起こした。
PS契約を終了してこれをコンセッション契約に置き換える(独占的権利を保有する連邦政府は高い税率により権利の放棄が補償される)ことには、国家石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)のデシオ・オドネ総裁という支持者もいる。PS契約では、連邦政府は生産された原油の75%を確保し、企業あるいはコンソーシアムが25%を受け取る。そしてこの分配以前の段階で、探査及び生産(E&P)に関連して企業が申告した全てのコストを差し引く。オドネ総裁の主張はまさにそこで、余剰品や消耗品を利用して経費を膨らませることで企業が利益を確保しようとしかねないというのだ。
「PS契約は、ブラジルで行われた最大の誤りだ。これによって投資家は、連邦政府に引き渡す原油の量を削減するために何らの基準もなく支出を水増しできる。工業部門がPS契約を優先するという動きがアフリカ諸国で始まったことは偶然ではない」とオドネ総裁は非難する。
同総裁は、岩塩層下のエリアでは石油資源を発見できないリスクが最小限のため、その他のエリアとは異なる扱いが必要だと認める。だが、連邦政府は特別参加税の税率を引き上げることで「より大きな」歳入に繋げることができるというのが同総裁の主張だ。これによって「より透明で、効率的、コストを削減し生産性が引き上げられる」。
今のところ、PS契約は有効であるが、オドネ総裁は、この問題に関する議論を立ち上げ継続することを厭わないと話している。(2017年9月30日付けエスタード紙)
*ジャーナリスト